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バイブコーディング前哨戦──Obsidian × GitHubでさえ悪戦苦闘した初挑戦
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- yutaro

最近、「バイブコーディング(vibe coding)」という言葉をチラホラ耳にするようになりました。これはOpenAIの共同創設者で、もともとTeslaのAI部門を率いていたAndrej Karpathy氏が2025年2月にX(旧Twitter)で命名した造語です。
There's a new kind of coding I call "vibe coding", where you fully give in to the vibes, embrace exponentials, and forget that the code even exists.
つまり、AIとの“会話”にまかせてコードを書かせるような感覚──コードそのものを意識せず、まるで波に乗るように開発を進められるスタイル、といったところでしょうか。
僕もその話を聞いたときに「これは絶対やってみたい!」とワクワクしたのですが、ちょうどその頃、【BTCインサイト | ニュースレター】の運営を任されて間もない時期。翻訳や執筆、準備や実際の配信が楽しくて楽しくて、他のことに手を出すなど想像もできませんでした。
そんな日々の中、6月初旬のある日。ニュースレターの情報収集に使っていたNotionに物足りなさを感じていた僕は、「もっとメモや情報を柔軟に扱いたい」「やっぱりバイブコーディングもトライしたいなあ」と思っていたタイミングで、Obsidianというノートアプリが目に入りました。
ノートアプリでありながら、ローカルにマークダウン(Markdown)形式で保存でき、プラグインを駆使して拡張できるという代物です。「業務にも使えそうだし、ちょっと試してみるか」と軽い気持ちで触り始めたのですが──今思えば、これこそが僕とバイブコーディングとの“未知との遭遇”、いわば前哨戦の始まりでした。
だから、この記事のタイトル「バイブコーディング前哨戦」とは、まさにそんな始まりを記すにふさわしい名前です。
Obsidianとの出会いは混乱の連続
「Notionに帰りたい…」の一言から始まった
Obsidianをインストールして最初に感じたことは──正直に言います。
「何これ……Notionに帰りたい……」でした(笑)。
Notionのように直感的にドラッグ&ドロップで操作できるわけでもなく、UIはどこか無骨だし。僕のようなノンプログラマーからすると、やたらと“優しくない”つくりに見えたのです・・。
「テンプレートって何?」
「プラグインってどうやって入れるの?」
「見出しの付け方が全然わからない!」
Notionなら感覚的に操作できてしまうことが、Obsidianではことごとく壁として立ちはだかりました。
投げ出したくなりながらネット検索の旅へ
最初は「自力でちょっと触ってみれば何とかなるだろう」と軽く考えていました。ところが30分も経たないうちに「これは無理だ」と悟り、早々にネットで記事を漁ることに。ブロガーやYouTuberがまとめてくれている「Obsidian入門」記事や動画に救われつつ、ようやく少しずつ道が開けてきました。
そこで初めて知ったのが「Markdown(マークダウン)」という書式です。名前だけは聞いたことがありましたが、本気で使うのはこれが初めてでした。
Markdownという未知のルール
Markdownとは、文章を装飾するための軽量マークアップ言語のひとつ。Wordのようにリボンから「太字」や「見出し」を選ぶのではなく、文章の中に直接「記号」を打ち込むことで構造を表現します。たとえば:
- 見出しは
#を頭に付ける(# 大見出し→ 大きな見出し) - 箇条書きは
-や*を行頭に置く - 太字は
**で囲む(**太字**→ 太字) - リンクは
[表示テキスト](URL)の形式
といった具合。最初は「え、こんなアスキーアートみたいな記号で本当に記事が整うの?」と半信半疑でしたが、実際にレンダリングしてみると綺麗に整形されるのです。
慣れるまでの試練
とはいえ、これがスッと身体に馴染むまでにはかなり時間がかかりました。文章を書きながら「えーっと、太字は【 ** 】で囲むんだっけ?」「リストはハイフン?アスタリスク?」と、毎回指が止まる。Obsidian自体もショートカットやプラグイン文化が強く、初心者には少々とっつきにくいのです。
この「Markdownを覚える」×「Obsidianに慣れる」という二重の壁は、僕にとってバイブコーディングの最初の障壁でした。
GitHubアカウントは持っていたけれど・・
ローカル保存の絶望感
Obsidianで最初の記事を書いたとき、僕はちょっとした衝撃を受けました。
「え、これってローカル保存なの?つまりスマホじゃ見れないの?」 ──それに気づいて心が折れそうになった瞬間を、今でも鮮明に覚えています(笑)。
クラウドに同期されるのが当たり前だと思っていた僕にとって、この仕様は致命的。クラウド保存は有料版なのか・・。
「もうNotionに戻ろうかな…」とすら本気で思いました。
GitHubという選択肢
そんなときに見つけたのが「GitHubのプライベートリポジトリに保存すれば、誰からも見られることなくスマホでも閲覧できる」という情報でした。なるほど、それなら便利そうだ。
僕はビットコインのオープンソース翻訳でGitHubアカウントを作ったことはありましたが、ほぼ放置状態。ましてやプライベートリポジトリを立ててObsidianと連携させるなんて未知の世界です。ここからが、新たな悪戦苦闘の始まりでした。
ターミナルという壁
なぜかこの時は、AIツール(Cursorなど)を頼らずに、自力で挑もうと決めていました。MacBook Airを前に、ターミナルを開き、ひたすら英語のコマンドを打ち込む日々。
「sshって何?」
「リモートって誰?」
「git push?pull?fetch?」
……カタカナ英語の嵐に飲み込まれる。
真っ黒な画面に点滅するカーソルは、まるで挑戦者を試す無言の門番です。ノンプログラマーの僕には、ただの嫌がらとしか思えませんでした。
小さな収穫
とはいえ、この“ターミナル設定”を体験したことは、のちのバイブコーディングに確実に生きています。黒い画面に向かって格闘した時間が、AIに助けられながらコマンドを扱う下地になったからです。
あの頃の苦労がなければ、今の僕はきっと「ターミナル恐怖症」のままだったでしょう(それにいてはまた別の記事で書きますね)。
技術メモ:GitHubとMacをターミナルでつなぐ基本
せっかくなので、当時を思い出しながら簡単にまとめておきます。僕が実際にやったのは 「Personal Access Token(PAT)方式」 でした。やり方はシンプルで以下の通りです。
プライベートリポジトリを作成
GitHubの画面右上から
New repositoryをクリックし、Privateを選んで作成。Personal Access Token を発行
- GitHubの画面右上のプロフィールアイコン → Settings
- 左メニューの Developer settings → Personal access tokens
- Tokens (classic) から新規発行
- スコープは
repoにチェックを入れておけば十分
リポジトリをMacにクローン
git clone https://github.com/username/repositoryname.git cd pathnameObsidianのノートを保存する
Obsidianの保存先フォルダを、このクローンしたリポジトリに指定。
変更をGitHubに反映する
git add . git commit -m "first commit" git push origin mainこのときに 「GitHubユーザー名」 と、パスワード欄に 「発行したトークン」 を入力すればOK。
最初は「パスワード入力だろう」と思い込んでいて何度も弾かれましたが、トークンを使ったら一発で通りました。これで無事にObsidianのノートがGitHubにアップロードされ、無事にスマホからも閲覧できるようになったのです。
<参考動画>
PAT方式については、この動画などがとても参考になりました(英語解説です)。
前哨戦の意義
こうして僕は、GitHubアカウントとMacBook Airをなんとか接続し、Obsidianをクラウド風に使える環境を手に入れました。もちろん、途中で投げ出したくなる瞬間は何度もあったけれど、この試行錯誤こそが「バイブコーディング前哨戦」にふさわしい一幕だったに違いありません。